A席でモテる。

A席でモテる。

選ぶ者はみな、演劇通。
それは古代からつづく"伝説の席"。

 天王洲 銀河劇場に行くとき、モテリーマンは3階・A席を選ぶ。
 もちろんS席はステキだ。舞台上のできごとをつぶさに観ることができる。ダンス後の汗、常識破りのアドリブに段取りを破壊されて泳ぐ目、紅潮する頬、激しいセリフとともにスプラッシュする「ダ」な「液」……俳優という生命体の躍動を間近に感じられる。安田顕の投げるバラをキャッチできる可能性もある。
 まったくもって! 「S席」の「S」は「ステキ」の「S」、そして「すばらしい」の「S」だ。
 だが、「モテる」ことに関しては、A席に軍配が上がる。驚いたことに、A席を選ぶ者は、何よりもまず演者からモテるのだ。
 舞台上の大東駿介や安田顕や高畑充希や川久保拓司やアルコ&ピースが、真っ暗なA席を見て「ああ! あそこに座ってるお客、超ステキ!」とか言うわけではない。舞台からは全然見えないから。だが、完全に彼らはA席を意識する。
 なぜなら、A席は"伝説の席"だから。
 演劇の始まりは紀元前5世紀ごろ。古くから演劇をよく知る者は、最後列の客席を好んだ。舞台上でだけでなく、劇場全体のうねりやどよめきを体験することができるからだ。それが今では3階・A席にあたる。あるいは、ひいきの役者に最高のタイミングで声をかける「大向こう」も3階。舞台の役者からは「待っていたとはありがてえ」の声。その一瞬だけ「大向こう」はキャストのひとりになれる。好きで好きでたまらない芝居通が、空いた時間にサラッと一幕だけ観て帰る「幕見」も3階席。

 この席を選ぶのは、すなわち見巧者。芝居をよく知り、粋に上手に演目を観ることができる者なのである。だから演者は、A席を意識する。姿は見えないまでも、そこに座るお客へ、熱く濃いオーラを投げかける(※)
 だからA席の住人は、S席を取ったみなさんからもモテる。
 ビールやパンフレットを買うときに、さりげなくA席のチケットをちらつかせ、「A席が……」「A席って……」というタームを会話の中に盛り込む。案内係のおねえさんに「悪いがA席はどこかな?」と尋ねる。モテリーマンがやろうとしているのはそれだけのことだ。が、それだけのことで周囲はざわめく。「A席だわ!」「A席ですって!」「芝居通よ!」「芝居通だわっ!」「ざわっ」「ざわっ」。さっそうと階段を上がっていく後ろ姿に、S席ちゃんたちだけでなく、実は係のおねえさんの目もハートなのだ。
 そして、朗報である。天王洲 銀河劇場のA席に限り、まだ手に入るらしい。なぜ、もっともモテるA席だけが買えるのかは謎だが、この「A席でモテる」という技を実践するチャンスだ。さあ、申し込め。手に入れろ。さすればモテは君のものだ。
※ええと、仮にこれまで俳優のみなさんが意識していなかったとしても、今回の舞台からは間違いなく意識することになる。なぜなら、この文章がサイトにアップされたことを全キャストにメールでお知らせするからだ。つまり、これまで意識して来なかった俳優のみなさんも「ほほう、あそこには芝居通達が陣取っているのか。これはきっちりせねばならぬな」と考え始めることになるのである。
舞台「スマートモテリーマン講座」 オフィシャルサイト
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